交通事故治療に健康保険が使えないと誤解している人が多いようですが、実際には交通事故によって受けた怪我にも「健康保険が使える」ということを覚えておきましょう。健康保険を使えば自由診療で全額を支払わずに済むうえ、一部の負担額のみを支払えばいいといったメリットがあります。
健康保険とは?
日本ではすべての国民に加入が義務付けられている制度が「健康保険」です。
健康保険は、怪我や病気、出産、死亡といった不足の事態が起きたときに必要な医療費や現金が支給される公的制度であり、共済組合保険や国民健康保険、後期高齢者医療制度といった種類に分けられています。
健康保険の保険料は被保険者と事業主がお互いに負担しあい成り立っています。
怪我や病気の治療を病院で受けたときには、義務教育就学のまえである乳幼児は2割、70歳以上の方は1割、義務教育就学後~70歳未満の方は3割の自己負担額を支払います。年齢のほか所得により自己負担額の割合に差が生じます。
健康保険が使えるケースと使えないケースとは?
交通事故治療による怪我に健康保険が使えることは先に述べましたが、診療の内容によっては健康保険が使えるケース、そして使えないケースがあります。
《健康保険が使えるケース》
交通事故による怪我をはじめ、病気、入院、在宅看護、薬代、医療器具代、手術代などに健康保険が使えます。治療をするために必要になるすべての診療に健康保険が使えます。
《健康保険が使えないケース》
一方で、美容目的の整形手術、皮膚の病(先天的)、予防注射、正常な妊娠や出産、特定健康診査を除く健康診断、先進医療などには健康保険が使っての治療はできません。しかし、怪我の治療の一つである整形手術や口唇裂の手術、狂犬病や破傷風などの感染の可能性がある場合の予防注射などは、健康保険が使えない診療の例外にあたります。
健康保険でカバーできる保障範囲とは?
健康保険は、怪我や病気など幅広い範囲に保障される保険です。
高額療養費と呼ばれる制度は自己負担が一定額を超えてしまった場合に、超過した分の額が払い戻されるようになっています。限度額適用認定証を取得し、事前に医療機関に提出しておくと超過した分を支払わなくても済むので便利です。
そのほか、出産育児一時金は条件がありますが、通常は42万円の給付を受けることができます。
会社勤めをする社員が加入する健康保険では、一定の連続した期間で会社を休んだときに報酬額の一部を支給される保障があります。中小企業の社員が加入している健康保険の協会けんぽや、大手企業同士が共同で立ち上げた健康保険組合では保障内容がいろいろと異なります。
交通事故治療で健康保険が使えないときってある?
交通事故治療で健康保険が使えないということはありません。
健康保険が使える医療機関で、万が一「交通事故では健康保険が使えない」といわれたときには、「第三者行為による傷病届」を提出するようにしましょう。
届書が手元にないときには申請中であることを伝えたうえで治療を受けて、あとで提出することができます。
第三者行為による傷病届が必要な場合の多くは、交通事故治療の費用は事故の加害者が支払うべきだという考えが病院側にあることが原因です。しかし、加害者からすぐに支払いをしてもらえるかというと、そうでない場合が多いため必然的に被害者が立て替え払いをするようになります。
医療費が高額な場合は立て替え払いがむずかしいこともあり、そのようなときには健康保険を利用して自己負担額をなるべく少なく抑えるようにします。
交通事故治療に健康保険が使えるということを知らないと、自己負担額が増えてしまい怪我の症状以外にも精神的なダメージにつながりかねません。交通事故は自分とは一切関係ないとは思っていても決して無駄になる知識ではないので、万が一に備えて健康保険の使い道を覚えておくと安心です。