加害者がわからない！ひき逃げ事故による怪我の治療費や補償について

交通事故の原因は出会い頭の事故や車体の後方からの追突事故、さらには歩行者と自動車の接触事故などさまざまです。

交通事故が起きたときには、加害者や被害者、または目撃者が事故の発生を警察に報告する義務があります。しかし、中には人身事故を起こしたにも関わらず、警察に報告せずに現場から加害者が逃走する「ひき逃げ」という犯罪があります。

ひき逃げ事故により負った怪我も当然医療機関にて治療を受けるのですが、加害者が逃走してしまったときには「加害者がわからない！」ということであり、怪我の治療費の支払いや損害賠償金請求は一体どうしたらいいのか不安になります。

そこで今回は、加害者がわからない「ひき逃げ事故による怪我の治療費や補償」について紹介します。

 

ひき逃げは自賠責保険の補償が受けられない！？

自動車を運転する人は「自賠責保険」への加入が義務付けられています。そのため、加害者が任意の保険に加入していなくても、被害者は最低限の保護を加害者の自賠責保険により受けることができます。

しかし、事故の責任がある加害者が事故現場から逃走してしまう「ひき逃げ」のときはどうでしょうか。

この場合は、ひき逃げにより交通事故の「加害者が分からない」とき、事故を起こした加害者が乗っていた自動車が実は「盗難車」だったときには、「自賠責保険の補償は受けられない」という最悪の結果になることがあるのです。

 

政府補償事業制度を利用する

予期せぬ交通事故により不慮の怪我を負ってしまった被害者とすれば、加害者から賠償を受けられないというのは納得できませんし、治療にかかる費用を立て替えることは経済的にも大きな負担になります。

こういった状況の被害者を救済するためにある制度が「政府保障事業」です。

政府保障事業は、被害者が最低限の救済を受けるために作られた制度であり、法定限度額内で政府がその損害をてん補する制度です。被害者が最低限の救済を受けるための制度ですので、実際に病院で治療を受けたときに治療費が高額であれば、制度だけでは補えないこともあります。

そのため、被害者は自身の「健康保険」を使って、自己負担額の一部を政府補償事業制度で補うようになります。治療を受けるときには事前にひき逃げでの怪我であること、そして加害者の自賠責保険を使えないために健康保険を使うことを病院に伝えておくようにしましょう。

 

政府補償事業制度の補償範囲

政府補償事業制度では、「自賠責と同等の補償」を受けることができます。

傷害の場合は120万円まで、死亡の場合は3,000万円、後遺障害の場合は75万円～4,000万円までと事故の内容により補償額（法定限度額内）が異なります。

この制度の対象となる事故は、ひき逃げをはじめ、加害者の事故車が盗難車であったとき、さらに加害者が自賠責保険に未加入だったときです。

これらの事故は政府補償事業制度の請求ができますが、傷害は事故が発生した日から3年以内、死亡は死亡日から3年以内、後遺障害の場合は症状固定（医学的にこれ以上治療を続けても回復の見込みが期待できない状態）となった日から3年以内と「時効」が定められています。そのため、政府補償事業制度の請求をするときには、なるべく早めに手続きをするようにしましょう。

 

政府補償事業制度で保険金を請求して支払いを受けるまでの流れ

政府補償事業制度を請求するための書類はたくさんあるので、早めに準備を進めておきましょう。

政府から損害のてん補（支払い）を受けるためには（1）はじめに請求者から「請求書類を提出」します。請求窓口は日本全国の損害保険会社や農協などで受付可能です。

請求書類を受理した損害保険会社は、次に（2）「損害保険料率算出機構に調査」を依頼し、必要であれば請求者に追加書類などの連絡を入れます。損害保険料率算出機構からの調査が完了したら、損害保険会社などから（3）「国土交通省に調査結果を報告」します。

（4）国土交通省から「てん補額の決定が損害保険会社に通知」され、最終的に（5）「損害保険会社から請求者にてん補額の支払い」がされます。

一般的に、てん補額が支払われるまでには約６か月～1年以上かかります。

 

 

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ひき逃げ事故は、事故を起こした加害者が分からないことから医療費の支払いや損害賠償請求がむずかしいことから、被害者を精神的に追い詰めてしまう大きな問題に発展する犯罪です。

このような被害を被った被害者を救済するために、今回取り上げた「政府補償事業制度」が存在しています。もちろん、ひき逃げ事故という凶悪な犯罪が起きないことが一番ですが、万が一に備えてこういった制度があることを覚えておくと安心です。